ごく幼い頃には、黒い仔猫の活溌なおどけた振舞に安心感が味わえるものだ。かくして黒い髪の人びとからメネスと呼ばれる少年は、奇妙な絵の描かれた馬車のステップに坐って優美な仔猫と戯れ、泣くことよりも笑みをうかべることのほうが多かった。
放浪者がウルタールに腰を据えて三日目の朝、メネスが仔猫を見つけられず、市場で泣きじゃくっていると、例の老人と女房のことや、夜に聞こえる物音のことを村人たちから教えられた。そしてメネスはこうしたことを聞くと、泣くのをやめて考えこみ、最後に祈りをささげた。太陽にむかって両腕をのばし、村人には理解できない言葉で祈ったのだが、理解しようとさしたる努力もなされなかったのは、村人たちの注意がもっぱら空にむけられて、雲が奇妙な形をとりはじめるのを目にしたためだった。はなはだ異常なことだったが、少年が祈りを口にするや、頭上に影のごとく朦朧《もうろう》とした異様な姿があらわれはじめ、いずれも円盤のついた角を備える、さまざまな要素の組合わさっ。自然は想像力たくましい者を感動させる、かような幻影に満ちているのである
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その夜、放浪者はウルタールを離れ、二度と姿をあらわすことがなかった。そしてウルタールの家長たちは、猫が一匹とて見つからないことに気づき、不安をつのらせた。すべての炉辺から、大きいのも小さいのも、黒いのも、灰色のも、縞《しま》のはいったのも、黄色のも、白いのも、猫がことごとく姿を消してしまっていた。市長のクラノン老は、メネスの仔猫が殺された意趣返しに、黒い髪の民がウルタールの猫を連れ去ったのだと言明し、キャラヴァンと少年をののしった。しかし痩身《そうしん》の公証人ニスが、あの老人と女房の猫に対する憎しみは隠れもなく、いよいよ大胆になっているために、疑うべきはあのふたりだといいきった。とはいえ凶《まが》まがしい夫婦にあえて苦情を申したてる者もなく、宿屋の主人の幼い息子アタルが、黄昏どきにウルタールのすべての猫があの呪われた庭の木陰に集って、何か前代未聞の動物の儀式をおこなっているかのごとく、二列になって荒屋をとりかこみ、いかめしくも悠然と歩いているのを見たと告げたときでさえ、あの夫婦を問いただす勇気をもつ者はいなかった。村人たちは幼い子供の話をどこまで信じてよいのかわからず、凶悪な夫婦が猫に魔法をかけて殺したのではないかと懸念しながらも、暗く不快な庭の外で出会わないかぎりは、年老いた小作人を譴責《けんせき》することを好まなかった。
かくしてウルタールはやりきれない怒りのうちに眠りにつき、住民が夜明けに目を覚ますや、何ということか、すべての猫が馴染《なじみ》の炉辺にもどっていたのである。大きいのも小さいのも、黒いのも、灰色のも、縞のはいったのも、黄色のも、白いのも、猫はすべてもどってきた。あまつさえ、いつにもまして毛並もつややか、腹をふくらませ、満足げに喉を鳴らしていた。市民たちはこの事件をたがいに話しあい、驚くことひとかたなら
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