「たまにはいいものですよ、心が落ち着きます」
本宮に着くと、二人はお礼を言って車を降りた。
男は車のエンジンを
neostrata 果酸かけた。」
「あれ?、降りないんですか?」
ケンが聞いた。
「よい旅を・・・」
男の車はあっという間に見えなくなった。
二人は本宮へと続く石段を登り始めた。
カズが足を止めて、聞いた。
「そういえば、あの人、朝以外に宿の中で会ったか?」
「いや、俺は見てないよ」
その時、カラスがひと鳴きして、飛び立っていった。
二人は思わず顔を見合わせた。
本宮は静寂の中にあった。
朝早くの参拝で、人がいなかったこともある
淨膚が、然現れる神殿は、古代の香りを漂わせていた。
早速お参りして、お札をもらう。
ここのお札は、熊野午王新符(くまのごおうしんぷ)といい、ヤタガラスを図案化した文字が刷られていた。
これから行く早玉神社、那智大社にもそれぞれ違う図案があった。
「やっと手に入れたな」
カズが言った。
「うん」
ケンはそれを見ながら、ふとさっきの男のことが頭に浮かんだ。
熊野三山の守り神、ヤタガラス。
「ところで、あの時、俺たちどうしてここへ来ようと思ったのかな?」
「そりゃ、受験のお守りとして、これをもらうた
權證到期めじゃないか」
「でも・・・」
「なんだよ」
「熊野のお守りは熊野信仰の人たちの災害よけらしいよ」
「え?、そうだったんだ。でもいいじゃないか。それに受験は終わってるし」
「うん」
「もう、下にある茶屋が開く頃だ、行こう」
そのみせは石の階段の下にあった。